かつてのマスタークロック 成れの果て 〜    NeverEnding備忘録 果てしなく追記し、続く予定

 かの3.11震災を機にAudio道楽を止めてというか、
細君からのAudio追放命令を受けて早10年、居間を大きく占拠していたオーディオ機器・レコードCDは
大方既に処分済みなのであるが...トホホ...
一頃、熱狂していたマスタークロック10MHz病の残骸の数々... 物置にそっと隠していたのが出てきたのである (^^;

まあ、懐かしい事もあり、今となっては何の役にもならぬ我楽多なのであるが、 処分の前に、
当時の薀蓄を穿りながら、再度の品定め記録を残すこととする。 

先ずは、大きい物から順に

其の1 GPSDOではない10811-60158 10MHz on Z3801A                    2020/11/23
2005年春、ヤフオクで落としたやつで、通信がXなことから、GPS受信できず
搭載する二重オーブン型の高安定OCXO 10811-60158 10MHzをStand Alone & Free Runで使っていたと云う代物
でもなんだかんだと、これが一番長く4,5年間 MasterClockとして使っていた  これが一番相性良かったんですね

10811-60158は何であるのか?   その立ち位置は?  ご参考 →  febo.com  Stability and Phase Noise Specifications
厳選されたSC-cut水晶搭載の10811を +40℃にHeater制御されたOuter Ovenに囲われた構造になっており、
屋外基地局設置の厳しい温度変化環境でも高安定な10MHzを提供  σy(1sec)  ≦ 9.8E-13 のf安定度をSpec.しています こんなのは60158だけです
HP Agilent Keysight, 10811-60165/60158     HP Agilent Keysight, 10811-60165/60158 

現物のInside
               10811-60158 随分と大きいのです  ケーブルカバーがしょっぱい色になっています 焼けたのかしらん?

 ここのEFC端子にDC電圧を印加してあげると周波数を制御Controlできます
  


F-Standard hp 105B上の10811-60109 10MHz基準で計測したEFC-F制御特性です。 ±6Hz程度の制御が限界
EFC=-2.15Vで10MHz Justになります。 厳密には、GPS基準で0.076Hzずれていますが...

SW電源+48Vを接続  60158 10MHzを起動後の消費 電流/電力 WarmUp時 約0.8A/約38W→ 定常安定時約0.3A/約15W 環境温度に拠ります 
このSW電源はFANを回さないので静かです 
ジイージイー鳴くような電源はMasterClock用には失格ですね


10MHz出力波形  1.94Vp-p  703mVrms @50Ω終端                 10MHz出力スペクトル   9.74dBm
 

10MHz位相雑音PhaseNoise特性 ( EFC=-2.15V時) 低位相雑音ですばらしいのですが、SW電源由来のHamNoiseが目立つのが難ですね(^^;


10MHz周波数短期安定度Allan Deviation特性    通電不足ながら-13乗のσyを出すのは立派


上記特性確認は、会社に現物持ち込み約3日通電後、会社休日に測定機材を借用しての測定で、もう少し通電出来たら...少し残念に思う処


其の2 心臓移植した hp Z3801A  GPSDO  10MHz   〜高精度TimeBase / 高安定Master Clock   どちらにもOK 〜

このZ3801Aは、会社の10MHz基準 (hp 105B+5087A) の定期校正用GPSDOとして2,3年運用されてたのですが....
その搭載10811-60158の位相雑音が特に秀逸であったことから、Phase Noise評価測定用Referenceとして独立運用となり、
心臓部を外されZ3801A君は修理用保守部品扱いとなり、不遇にも会社倉庫棚に5年ほど鎮座してたのでした。

出てきたMaster Clock予備群が多数出て来たこともあり、かわいそうなZ3801Aの心臓移植・再復活を企てたのでした。

さて、Z3801A心臓(OCXO)移植にも、必要諸条件が有ります。 
a)最低でも-12乗orderの周波数安定度を持つこと  水晶はSC-cut品が望ましい
b)  Z3801A内部に有る+15V, +12V, -12Vの電圧源で対応可能なこと
c)  EFC制御特性の制御幅(Pulling Range)、極性が10811-60158と同等であること

さて、ここで選ばれたのが米国Texas生まれの Wenzel ONYL君でした Floor Noiseが極めて優秀で、マスタークロック向きなんですね

現物のInside    DC・DC上の汚らしい黄色は、おそらく、ヒートシンクを載せた時に塗ったグリース痕です。 きれいするのはとても困難(^^;
 

                                                   移植したWenzel ONYL君です  拡大写真

GPSDOとしての運用Test  GPSアンテナの立っている倉庫小屋に場所を移して.... 空調が無く、寒暖差が大きいのでGPS受信の試験場所にピッタリです

当該Z3801Aの稼動テストにはSystem電源Agilent 6613C(50V/1A max)を使用   通電直後の消費は約0.4A 20Wで、純正Z3801Aの半分程度

10MHz出力波形  約13dBm  ONYL君の出力波形はきれいなSine波なのですが、Z3801A上の出力Bufferで波形に歪が出ています。


超定番の hp SatStat  現在はSymetricom SatStat    68k Mac版も有ったほど、長く広く行き渡った由緒あるGPSモニターです
シリアル通信条件は下↓の通りで、Baud:19200bps, DATA:7bit Stop1bit,Parity:ODD    RS-232CクロスケーブルでPCと接続します
尚、SatStatはRS-232C(Legacy)Portを持つ古いPCのみ対応  通信が確立すると、の様にZ3801君と会話、命令伝授が可能になります                                     


 SatStatが教えてくれるGPS Receiverの  Status

Legacy Portを持たないノートPC等では、USB-232Cシリアル変換使用が前提となりますが、 この場合、Port割当がCom 5以降になり使えないのです。
USB経由でGPSをモニタ管理したい場合は、Lady Heatherがオススメです。 こちらは、もっと楽しんで使えます

KE5FX氏が開発されたFree GPSDO Control Program  Lady Heather 5.0 でのm表示例(約1日間のMonitor動作)   
  画像クリックすると拡大表示します


周波数Recovery補正の様子
は、別晩の22時前に計測した内容でGPSDO Recovery周波数補正の様子を見事に捕らえてます  拡大上図Recovery様子対比して診て下さい


22時過ぎ、更にを計測サンプリングτ時間を変えながら測定下周波数安定度としての特性です


周囲温度変化や他の外乱等で、f変動が1mHz程度に達するとRecovry補正が入ります。周波数誤差1mHz以内を是が非でも死守する風ですかねえ:−)
誤差精度を重視する10MHz基準TimeBaseとして必要な処置なんですね。
一方、この補正処理はGPSDO固有の処理なのですが、Phase Jitterの良し悪しが要となるMasterClockには極めて芳しくない事象なんですね。
     周波数精度重視→TimeBase         位相安定度重視→MasterClock
Wenzel ONYL君は、2重Ovenの60158と異なり、Single Ovenです。当該機をMaster Clock源として使うのであれば、
空調の良く効いた室内に置く
のは勿論、GPS同期をさせない(アンテナを抜いて強制Holdoverさせる or EFCに外部接続で固定電圧印加)
のが上策かと考えます。

GPSDO10MHz PhaseNoise Phase Jitter  
勿論、充分に温度を安定させた室内での計測ですので、Recovery補正の悪影響は出ていません
前↑の60158と比較して電源由来のHamNoiseが随分少ない、Agilent電源がの良いのか? ONYL君が凄いのか? はて?
流石Wenzel ONYL君、10Hz超のFloor特性がすばらしい
MasterClockに良好な特性ですね (^_^)V
尚、Offset 20kHz近傍のNoise小山はZ3801A固有のGPS制御由来のものです。GPS制御を止めると無くなります。
 
   fL   -----   電源Ham基底となる 50Hz or 60Hz,  可聴下限の20Hzとか
   fH   -----   MasterClock周波数 44.1kHz , 48kHz 88kHz  , 48kHz ,  96kHz 
                                                             
 or ナイキストの定理を加味してこれら半分  22.05kHz, 24kHz, 44kHz, 48kHz
Phase Jitter評価のOffset f範囲fL-fH任意範囲でOK  要は、位相雑音のFloor Levelが低けりゃ良いんです 
一方、短期周波数安定度に於いては、 小さいτ0.1secでのAllan偏差σy値が如何に小さいかがMasterClockの良し悪しを決めます。

其の3 米国 MTI(Milliren Technologies, Inc.)
Stratum IIIe performance Low Phase Noise
 251型 OCXO  10MHz
http://www5.omn.ne.jp/~etimellc/inst/MTI251-1537C_10MHz.jpg  

出力周波数  10MHz   
電源電圧  +12V                      
消費電流 WarmUp時 約0.25A  → 安定定常時 約 80mA   約15分で安定 周囲温度に依存します
 
外形寸法,PIN接続            単位 inch (mm)



以下は2021年3月に計測した内容

 外部電圧周波数制御特性  -4.26Hz to +4.41Hz  /Vtune : 0V to +7V    F-Ajust at Vtune≒+3.3V

以下は2017年3月に計測した内容
出力波形  正弦波 532mVp-p/50Ω  -1.8dBm出力  
http://www5.omn.ne.jp/~etimellc/inst/MTI251_10MHz_OutputWave.jpg

位相雑音特性 Phase Noise
http://www5.omn.ne.jp/~etimellc/inst/MTI251_10MHz_PhaseNoise.gif

 周波数短期安定度  すばらしい
http://www5.omn.ne.jp/~etimellc/inst/MTI251_10MHz_AllanVariance.gif


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