Inroduction to Allan Variance 2 アラン分散入門 #2a

周波数揺らぎの周波数領域(frequency domain)評価が位相雑音(Phase Noise)であるのに対し、時間領域(time domain)評価がAllan分散なのである。両者は同一内容を評価してる
ことから、相互に変換計算が可能であったりする。この頁では、その辺の理論的内容の意味する処と変換計算式を紹介する。

             周波数基準源の周波数領域評価  ---  Phase Noise


                 周波数基準源の時間領域評価  ---  Allan Deviation
    

位相雑音スペクトル密度Sφ(f)をフーリエ周波数(キャリアからのオフセット周波数)の1/f 冪乗則を用いてでノイズ成分毎に分解することができる。


位相雑音(Phase Noise)からAllan分散(Allan Deviation)に変換計算する具体的手順例を以下に示してみる。
先ずは先々に出てくる数式の前提として、信号波の定義とPhaseNoiseのPower冪乗式を以下に定義して置く。 参考文献の都合から英文が多いのは、ご免戴きたい。

  信号波の定義                            PhaseNoiseのPower冪乗則


早速、こちらに評価Reviewしている周波数標準器 hp 105B 5MHzの位相雑音特性を具体例として取り上げてみる。


具体的には位相雑音特性に対し、下ので囲んだ各傾斜の接線を引き,f=1Hzでの切片値を得ることで、
β乗Power成分の係数βを求めることが出来る。 至って単純な作業なのである(^^v




で求めた係数βを基に表計算に入れ、近似された位相雑音特性L(f)が下のGraph, 特性Tableになる。破線が各β乗Power成分の特性である。



近似位相雑音特性L(f)は、各β乗Power成分の総和を上式で算出する。 offset 毎に各Power成分がどんな按配で占めているのかに留意されたし

下表↓( Time Interval Analyzer hp 5372A Application Note AN 358-12 からの抜粋)を参考に、



 上表の関係に従い、Allan分散値を下式の様に展開して求めることができる。 平均時間τ冪乗数と係数βとの関係に注目されたい。
 

 上式に至る理論的背景は、こちらをご参考頂くものとし、上式に従い計算すると.下の短期周波数安定度(Allan Deviation)特性結果が得られる。
 尚、ここでは測定帯域上限fhを100kHz として計算している。 ついでにTotal RMS Jitterも計算しており、0.213psecの結果となっている。


 上表は長期安定度の計算結果である。あくまでもτを任意の値に設定しての机上計算であるが... 
数理統計上、±3σy(τ=1年)の計算結果はAging Rate≒ 経年f変化量の推定値と見なせる。 この計算結果は、±5.5E-9/Year 
  
     

左のσy実測特性は、Allan分散入門#1での特性を紹介しているOCXO110をREF信号として
hp 105Bを評価測定した結果である。

OCXO110は105Bより数段優れた安定度の信号であるので、左のσy実測特性は
ほぼhp 105Bのσy安定度を示すものと思って
頂いて良い。ここでは、共に2逓倍した10MHz
評価している。

上記の計算結果と比較して如何でしょうか?
若干差異は有るも、特性傾向は一致している

2019年7月に壊れたOCXO110が最近治った
ので、5MHzでの再測定を行い、近々報告したいと考えている。



  左は
各Power Noise成分がAllan偏差σに対し、
どの程度、どんな具合に寄与しているかの詳細を
見えるように現した特性グラフである。

τ ≦ 0.1secの短期時間領域では
White Φ Floor Noise
τ ≧ 10secの時間領域では
Random Walk F

Allan Deviation σ値を支配決定している
ことに留意して頂きたい。

経年変化を決定付けるのは、
Random Walk成分のみなんですね!